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共編著としてまとめた最初期のものは『波の記譜法:環境音楽とは何か』(1986)。作曲家・芦川聡の遺稿や解説付きのディスコグラフィーも含め、環境と音楽との関係をさまざまな立場から問い直す論考を広く集め構成したものです。また、美学者・谷村晃先生(日本サウンドスケープ協会会長/当時)と手がけた雑誌の特集号『現代のエスプリ:サウンドスケープ』(1997)は、90年代後半のサウンドスケープの位置付けが分かる内容となっています。
1980年からのカナダ留学は、サウンドスケープ概念を生んだ社会とその風土を知るためのある種のフィールドワークでした。R.M.シェーファー個人とその活動母体としてのWSP[World Soundscape Project]の調査を通じてサウンドスケープ概念が成立・深化したプロセス等を明らかにした『サウンドスケープ:その思想と実践』(1997)には、この時期の調査研究活動の成果を凝縮しています。そのため、留学前のサウンドスケープ概念との出会いと、帰国後のデザイン活動の実践については、同書に盛り込めなかったことも多々あります。
帰国後、個人で最初に手がけた調査は埼玉県の大宮をフィールドにしたものでしたが、ほどなく当時働いていた東京YMCAのある神田を拠点に、仲間たちと共に「神田サウンドスケープ研究会」を立ち上げることになりました。この研究会の活動成果をもとに執筆したのが「音の風景からたどる都市」(『21世紀の都市社会学 第3巻 都市の読解力』所収, 1996, 勁草書房)です。
「火の見櫓からまちづくりを考える会」によるフィールドワークに参加してまとめたのが「半鐘のサウンドスケープ」(『火の見櫓:地域を見つめる安全遺産』所収, 2010, 鹿島出版会)、池の畔に棲まう精霊たち―聴く力が紡ぐ土地の物語 『モア・ザン・ヒューマンの物語』(2025、ミネルヴァ書房)、また地元善福寺での日々の暮らしにおける諸活動から執筆したのが「音風景史試論」(『水都学III』所収, 2014, 法政大学出版局)です。
一方、明治時代初期、お雇い外国人の一人として来日したエドワード・モースにが記した『日本その日その日』を「耳の証人」とした論考「音の風景:モースが聴いた明治の音」(『日本史の環境 (日本の時代史29)』所収, 2004, 吉川弘文館)は、文献調査等に依拠するサウンドスケープ研究が成立し得ることを示しています。
「デザイン」をキーワードにした論考、「音環境デザインの地平とその手法」(『環境をデザインする』所収, 1997, 朝倉書店)と『くらしとデザインの本:これからのデザイン』(2009, 日本デザイン機構編)とではその内容が大きく異なりますが、いずれの論考も「サウンドスケープの考え方」をベースとしています。つまり、音環境デザインを地域環境計画として展開する必要性を論じている前者に対し、後者は「音」というテーマを超え、地球環境そのものを視座に入れた21世紀的デザイン論となっています。「音環境デザイン」から「暮らしのデザイン」という論点の変化・拡大は、サウンドスケープとデザインという二つのテーマについての思索の深化であると同時に、その背景には20世紀後半から21世紀にかけての時代・社会・思潮等の変化もあるのです。
また、青山学院大学総合文化政策学部への移籍を契機に開始して以降、継続・展開している<SCAPEWORKS 百軒店-円山町>の成果のひとつとして、分担執筆者兼監修者として『渋谷円山町に生きる 料亭三長』(2024, 料亭三長)という書籍をまとめました。神泉・円山町という土地の力を踏まえた「生き物としての都市・建築論」にもなっています。一方、やはり2010年から現在に至るまで故郷の土地で続けている<池の畔の遊歩音楽会>について、その10年間の歩みを中心にまとめた共著が『触発するサウンドスケープ―<聴くこと>からはじまる文化の再生』(2024, 岩波書店)です。
海外で出版された本に掲載された論考としては、立山博物館野外施設音環境計画を紹介した “A Reclamation of the Sonic Geography of Mount Tateyama Through the Design of the Tateyama Field Museum” in Sonic Geography – Imagined and Remembered (2002), 瀧廉太郎記念館の音響計画を「音の庭 [Soniferous Garden]」というコンセプトで紹介した”A Soniferous Garden of Rentaroh” in Hearing Places 2007があります。また、サウンドスケープを「広義の音楽」と位置付け、彼女が愛した二つの音楽からイギリスの作家、ルーシー・ボストンの生涯を論じた”Lucy Boston and Two Musical Concepts” in Lucy Boston〜An Artist in Everything She Did, 2021等があります。
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